妊婦のみなさん、授乳中のママさん、今年もい よいよインフルエンザ(インフル)の季節がやってきました。妊婦さんは子供や高齢者と同じように、インフルになると重症になりやすいと言われています*1。
シバ太が、皆さんが今シーズンをうまく乗り越えられるお手伝いをいたします!
まとめ
- 妊娠はインフルが重症になりやすいので注意が必要
- 妊娠中や授乳中に使えるインフルエンザの薬があります
- 妊娠中でも授乳中でも、インフルエンザの予防接種は受けて大丈夫
インフルエンザの症状と診断は?
インフルエンザ(インフル)は、ウイルスが起こす風邪の一つですが、普通の風邪に比べて症状がひどいことが特徴です。インフルにかかると、1~3日間(潜伏期間)後に発熱、頭痛、ひじや膝の痛み(関節痛)、体のだるさなどが出て、その後に咳や鼻水などがでてきます*2。人によって症状がひどかったり軽かったりしますが、多くの人は約1週間で良くなります 。ただし、妊婦さんは、免疫力が低下しているため肺炎になったり、入院するリスクが高いので注意が必要です注。
インフルの検査は、鼻に綿棒のようなものを突っ込んで行います(迅速検査キット)。持病のない健康な人は、インフルにかかっても自然に治ります。そのため検査はせずに家で体を休めていることが勧められています。
また、病院やクリニックの検査キットは「インフルエンザにかかった直後」では陽性になりにくいので注意が必要です。特に熱が出てから6時間以内だと体の中のウイルス量が少ないので、検査が不正確になりやすいと言われています。妊娠中の人や、産後2週間の人、高齢者や持病がある人は、インフルの薬を飲んだ方が重症になるのを予防できるので、検査をするか医師と相談してください。
注・・・妊娠中は赤ちゃんを育てるために母親の免疫力を低くして、赤ちゃんを攻撃しないようにしています。これを免疫の「寛容性」と言います。
妊婦さんや授乳中に薬は飲んでも大丈夫?
妊娠中や授乳中であっても、安全に使える薬は沢山あります。
妊娠中の高熱は、お腹の赤ちゃんに影響が出るという報告もあり*1、妊婦さんには熱が38度を超えるようなら熱冷まし(解熱剤)の使用をオススメしています*1。熱冷ましや痛み止めは、アセトアミノフェンは問題ありません。市販の解熱剤には、妊娠中に避けたほうがよい非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)が入っている時があるので注意しましょう注。授乳中の方は、アセトアミノフェンもNSAIDも、どちらも授乳しながら安全に使用できます*3。
注・・・ロキソニン、ボルタレン、イブプロフェンなどは非ステロイド性消炎鎮痛剤と呼ばれており、妊娠後期に飲むと羊水が少なくなるリスクがあると報告されています。
熱冷まし・痛み止め
妊娠中
◯ アセトアミノフェン
✕ NSAID (非ステロイド性消炎鎮痛剤):羊水が少なくなる危険性がある
授乳中
アセトアミノフェンもNSAIDも、両方安全に使用できる
抗インフルエンザ薬は、症状が出てから48時間以内に飲むことで、発熱が1~2日間短くなったり、重症になるのを予防すると言われています*1。妊娠中や授乳中でも、タミフル(オセルタミビル)もリレンザ(ザナミビル)も通常どおり使用できます*1*3。妊娠中にタミフル、リレンザ、イナビル(ラニナミビル)を使っても、お腹の中の赤ちゃんに悪影響は報告されていません。ラピアクタ(ペラミビル)は動物実験で流産や早産の報告があるので、注意して使う必要があります*1。タミフル、リレンザ、イナビルは、母乳へ移行する量は非常に少ないので、授乳は通常どおり行って問題ありません*1*3。
インフルの薬は予防投与という使い方も可能です。インフルにかかってしまった人と長時間接触してしまった場合、タミフルやリレンザを使うことで感染を予防することができます。これも妊娠中でも授乳中でも使うことができます*1。
インフルエンザの薬
妊娠中でも授乳中でも使用できる
◯タミフル・リレンザ・イナビル
妊娠中は注意が必要
△ラピアクタ
インフルにかからないようにする3つの方法
インフルにかからないようにするには①予防接種(ワクチン)をうける ②外出したら手洗いウガイをしっかりする ③人混みを避けたりマスクをする、という3つの方法があります。 インフルのワクチンには、①発症を防ぐ、②感染しても重症になるのを防ぐ、の2つのメリットがあります。ワクチンを注射してから効果がでるまでに2~3週間かかるので、流行する少し前の11月に注射を受けることが勧められています(1)。
インフルワクチンは不活化ワクチンといってウイルス自体は死滅しているものなので、妊娠中や授乳中でも安全に接種できます*1*3*4。もちろん、医薬品全てにいえることですが、アレルギー等の問題はありますので、必ず予防接種する医療機関の指示には従って下さい。
インフルエンザワクチンは、インフルの感染や重症化を予防し、妊娠中や授乳中でも安全に接種していただけます。ぜひ、かかりつけ医や産婦人科医と相談して接種を検討してくださいね。
もっと詳しく知りたい方へ
インフルエンザについて基礎知識が紹介されています
*平成30年度版はまだ発表されていません(2018/11/06現在)
くすりの適正使用協議会のHP
妊娠中や授乳中の薬について基礎知識が解説されています
参考文献
- 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会,産婦人科 診療ガイドライン~産科編2017
インフルエンザについて p63~
妊娠中の薬について p72~
授乳中の薬について p87~ - 国立感染症研究所 インフルエンザとは (IDWR 2005年第8号掲載)(2018/11/06現在)
- 国立成育医療研究センターのHP
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/h1n1.html
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist.html - CDC: [アメリカCenters for Disease Control and Prevention]
Flu Vaccine Safety and Pregnancy
https://www.cdc.gov/flu/protect/vaccine/qa_vacpregnant.htm
https://www.cdc.gov/breastfeeding/breastfeeding-special-circumstances/maternal-or-infant-illnesses/influenza.html
■執筆■ 福井 陽介
大和高田市立病院 産婦人科 医員
同附属看護学校 非常勤講師
■イラスト■ 春柴
■監修■ 柴田 綾子
淀川キリスト教病院 産婦人科医
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