妊娠中は、つわりがあって食べられなかったり、逆にムクミや便秘で、食べてなくても体重が増えてしまったり。
「◯◯は食べてはダメ」と言われたり、、、、とても大変ですね。
妊婦健診でも「◯◯は食べて大丈夫ですか?」「体重増え過ぎですか?」と心配する声がたくさんあります。今回は、妊娠中の食べ物や体重について説明します
妊娠中は「生焼けのお肉や生もの」は注意!
妊娠すると免疫が弱くなるため、妊婦さんはばい菌(微生物)に感染しやすい状態になっています。
下のような生ものは、赤ちゃんに悪さをする「リステリア菌」などが含まれていることがあるので避けましょう。
しっかり火を通して加熱したものであれば安全です。
・生のチーズ
・生ハム・サラミ
・生焼けのお肉
・魚や肉のパテ
ばい菌は、手や口から入りやすいので食事の前には必ず石けんで手を洗いましょう。
ガーデニングやペットの家の掃除をする場合は、素手ではなく手袋を使いましょう。
参考:妊娠中の食事について知っておいてほしいこと 厚生労働省 ポスター
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/ninpu.pdf
魚の水銀は「種類と量」に注意すれば大丈夫
魚派カルシムやDHA(ドコサヘキサエン酸)など、妊娠中や産後に必要な栄養素がたくさん含まれています。
ただし、魚の種類によっては水銀が多く含まれていることがあります。
水銀は胎盤を通して赤ちゃんに悪影響をすることがあり注意が必要です。
下のような魚は水銀が少ないため安全に食べられます
・ツナ缶
・ブリ・カツオ
・イワシ・サンマ
・アジ・サバ
・サケ・タイ
次の魚は水銀が多く含まれていることがあり、1週間に1回前後(80g)にしておくのが安全と言われています。
・キンメダイ
・本マグロ
・クロムツ
・クジラ・イルカ・サメ
参考:お魚について知っておいてほしいこと 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/index.html
なぜ妊娠中に体重に気をつける必要があるの?
実は妊娠中は「やせすぎ」も「太りすぎ」にも注意する必要があり大変です。
・やせすぎの場合
妊娠中にお母さんの体重が全然増えないと、赤ちゃんが大きくなりにくかったり、
切迫早産、早産となるリスクが高くなります。
・太りすぎの場合
妊娠中にお母さんの体重が増えすぎてしまうと、お母さんの膝や背中に負担がかかって痛みが出やすかったり、
お産がうまく進まずに帝王切開が必要になったりします。また、赤ちゃんが大きくなりすぎたり、血糖が高くなったり(妊娠糖尿病)、血圧が高くなったりします。
妊娠中の体重管理はどうしたらいいの?
妊娠中の体重は、身長が高い方や小柄な方、元々ふっくらした方など、
妊娠前の体格によって目標の目安が変わります。だいたいの目安として
妊娠中の体重増加目標 = 妊娠前の体重 + 10~12kg (1週間で0.3 ~ 0.5kg/週)
というのをお伝えしていますが、詳しくは下のような形で計算しています。
ステップ① 「妊娠前の体重」からBMIを計算してみましょう
体重(kg)を身長(m)で2回割ります
BMI= kg ÷ m ÷ m
例 体重 86.7kg 身長 170cm(1.7m)の場合
BMI = 86.7 kg ÷ 1.7 m ÷ 1.7 m = 30 (肥満)
例 体重50kg 身長 160cm(1.6m)の場合
BMI = 50kg ÷ 1.6m ÷ 1.6m = 19.5 (ふつう)
ステップ② 自分の妊娠前のBMIに合わせて下から選びます
*体格の基準や妊娠中の体重増加量目安については学会ごとに少し違います*BMI25以上の方は、妊娠中の体重増加を5~7kg (日本産科婦人科学会)とする目標もありますが、
個々の状況が異なるので、主治医の先生にたずねてください。
あくまでも目安の目標なので絶対に守らなければと無理しなくて大丈夫です。
また、つわりの時期は体重が減ってしまったり、つわりが終わると体重が一気に増えたりしますが、
妊娠期間全部での目標なのですぐに目標どおりにしなくて大丈夫です。
参考:妊産婦のための食生活指針 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3b01.pdf
「バランスのよい食事?」実際どうしたらいいの?!
これはイイ、これはダメといろいろあって混乱してしまいますね。
厚生労働省や農林水産省の「食事バランスガイド」では、
1日にどれくらいの食事をとるのがいいのか、イラストで分かりやすい説明があります。
①主食、②副菜、③主菜、④牛乳・乳製品、⑤果物に対して、1日の食品数を数えていくものです。
食べたものを日記などにメモしておくとやりやすいかもしれません。
参考:妊産婦のための食事バランスガイド 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3b02.pdf
1日どれくらいカロリーが必要なの?~もっと詳しく知りたい方へ~
妊娠中は、赤ちゃんの体を作るために多めにカロリーが必要になります。
また、産後は母乳をつくるために多めにカロリーが必要です。
1日に必要なカロリー = ステップ①+ステップ② で計算します
ステップ① 自分の年齢と1日の運動量を選ぶ
ステップ② 妊娠時期を選ぶ
妊娠時期によって1日当たり必要なカロリーが変わります。
授乳中も母乳を作るために多めにカロリーが必要です。
1日に必要なカロリー = ステップ①+ステップ② で計算します。
参考資料 日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
参考文献
・妊娠中と産後の食事について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/ninpu-02.html
・日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会,産婦人科 診療ガイドライン~産科編2017
妊娠前の体格や妊娠中の体重増加量については? p53~
http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2017.pdf
■執筆■ 福井 陽介
大和高田市立病院 産婦人科 医員
同附属看護学校 非常勤講師
■イラスト■ 春柴
■監修■ 柴田 綾子
淀川キリスト教病院 産婦人科医
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